海洋ビルヂング
中央区銀座6-4-11 /竣工年: 不詳 /設計: 不詳 /4階
外堀通りと交詢社通りが交差する角地にあり、小規模ながら、焼鳥『明珍』を始め、薬局、バー、服飾関係等さまざまな店舗が入る商業雑居ビル。竣工時期・設計者・施工者等がことごとく不詳という謎の多いビルですが、竣工時期はおよそ大正末から昭和5(1923〜1930)年くらいまでの震災復興期と推定されます。謎と云えば、海洋ビルヂングという名前の由来も謎のひとつ。銀座は意外と海に近いところではあるのですが...。
外観は個性的です。角を切り落とした外壁が*スクラッチタイル張りなのはその時代の典型なので普通だとしても、屋上の壁(パラペット)を見ると中世城郭風なデザインとスペイン瓦が同居しています。なぜか大通り側でなく、道幅の狭い交詢社通り側に面して塔屋が持ち上がっていますが、掲げてあるテラコッタ(焼きもの)製らしき四角いレリーフは、朽ちているのか、もともとこうだったのかわからないような、直線の不規則な組合せ模様です(下の写真を参照)。
これがもし意図されたデザインならば、直線や幾何学模様を多用した当時流行の様式・アールデコの影響かと思われます。しかし一方では、その割にはアールデコ特有の華やかさがまるで感じられず、歯抜けのような、やはり決定的に何かが足りない気がします。重要な部分もしくは全体が、既に落ちてしまったのでしょうか。
また、ひさし状の水平な出っ張りが、大小とりまぜて随所に出てくるのも特徴的です。
見ているだけでいろいろと興味は尽きませんが、銀座のこれほど目立つ場所にこういう古くて楽しいビルがあるのは、今となってはとても貴重です。長く残ってほしいものです。(2002年2月記)
交詢社通り側から見る。塔屋にはもともとどんな装飾があったのだろう
*スクラッチタイル: 引っ掻いたような表面のタイルで、平らなタイルとは異なる独特の風合いをもつ。大正から昭和初期にかけて流行した