松屋東別館(旧日本酸素ビル)

中央区銀座3-7-9/1927年竣工 /設計: 清水組 /RC造4階

街の中には、現状からは昔の姿・用途が想像できない建物というのがよくあります。このビルもその好例。今は銀座松屋デパートの東別館として、売場ではなく事務所として使われているようです。

このビル、小振りながら実は日本酸素株式会社の本社として昭和2(1927)年に竣工しています。昭和33(1958)年まで、同社は銀座を本拠としていたのです。竣工当時はこの隣の敷地に松屋裁縫部があったので、日本酸素の移転後に松屋に譲渡されたのだろうと推測されます。

今はファサード1階部分に樹脂系の塗料が吹付けられ、壁面の汚れもあり全く地味な存在ですが、竣工当時の写真によると外観の旧状は次の通りです。

・1階部分は石張り(現在は上塗りされ、石の質感なし)
・今も残る3連半円アーチ + 平らな庇という意匠はそのまま。
・かつては庇の縁に金属製の細かいアールデコ風の細工があったが、これは塗り込められたと思われる
・そのすぐ上の幅広の空白スペースに [◯ 日本酸素株式會社 ◯] と社名が掲げられていた
・2階〜4階を六角形の*ピラスターが貫いているのは現在も同じ。ただし、今は削られたか塗り込められた柱頭の装飾があった

全体の形は屋上の増築を除いては不変ながら、意匠や質感上の特徴が消えたことが、外観の洒落た雰囲気を削ぎ、魅力を大きく下げることとなってしまいました。当時としては非常にモダンで簡素だったこのビルにとっては、現状は不幸と言うべきでしょう。松屋デパートがこのビルの外観を復元し、建築本来の魅力を生かした使い方をしてくれることを願って止みません。(2002年6月記)

*ピラスター: 付け柱のこと。壁面から張り出した柱状の突起。

 

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