ライオン銀座七丁目ビル(日本近代建築総覧No. 15488)
中央区銀座7-9-20/1934年竣工 /設計: 菅原栄蔵 /SRC造6階
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しかし、ここはまぎれもない「銀座の名店」でありながら、前述の店たちとは一線を画します。ビヤホールという元来の性格からか、それとも経営側の見識がよほど高いのか、70年近い伝統や老舗としての誇りは十分に感じさせながらも、誰でも往年のハイカラな、どこか懐かしさを伴う「銀座らしさ」を満喫できる店として維持されている点において、貴重な場所だと言えます。交詢ビルディングにかつてあったビヤホール「ピルゼン」も同種の店のひとつではありましたが、2001年秋に閉店してしまいました。
改装が激しい外装に対して、建築的な見どころはむしろ内部にふんだんにあり、とてもここで全ては紹介しきれません。仙台が生んだ大正〜昭和期の名建築家・菅原栄蔵の設計によるこのビルの1Fのインテリアは、荘厳にして力強く、繊細にして優美。多くの文献に「ライト風」と紹介されるそのデザインは、ライトの影響は無視できないまでも、決してそれだけに終わらないように自分には思えます。奥の大壁画を筆頭とする大小のガラスモザイク画は菅原氏自身が手掛けたもので、当時としては驚くべきことに、この分野では進んでいた西欧の職人の手を借りず、素材のガラスモザイクから全て国内の職人の手で製作されました。色の調整を始め相当な苦労があったことは、栄蔵氏の子息である菅原定三氏の著書『美術建築師・菅原栄蔵』(1994年 住まいの図書館出版局)に詳述されています。
ゴシックの教会を連想する柱、細密に細工された*抗火石張りの梁や天井などを眺めるにつけ、ビヤホールという喧噪の場所であることを一瞬忘れさせ、何やら自分が聖なるところにいるような感じさえするのは、決してビールの酔いのせいではなく、これこそ建築空間のもつ品格のなせる業ではないでしょうか。
ある意味で、銀座の象徴ともいえるこのビヤホール。いつまでも、この地に現役であってほしいものです。(2002年8月記)
*以前の記述『凝灰石』を訂正しました。(2004年1月)
右: 屋上の奇妙な構造物だけは当時のまま。尖鋭的なデザインが目を奪う