DNタワー21 旧農林中金側(日本近代建築総覧 No.15056-7)

千代田区有楽町1-13-1/1933年竣工 /設計: 渡辺仁 /SRC造6階(現状は部分保存)

皇居のお堀端東側、有楽町・丸の内を走る日比谷通り。個人的なことですが、この通り沿い、お堀を向いたビル群は、自分にとって東京の原風景というべき景観です。以前はビルの高さも100尺=約31mに揃いながら個性を競い、えも言われぬ建築美と統一美を誇っていました。今はそのスカイラインも新築の高層建築によって部分的に崩れてはきていますが、それでも軒の揃ったビルが広い通りを挟んで延々とお堀の水面に映っている姿は美しく、他のどの都市にもないといっていい、東京屈指の景観美でしょう。

お堀端の建築群の中で特に有名なものはふたつあります。ひとつは1934年竣工、名手・岡田信一郎の手による華麗な古典様式のオフィスビル明治生命館。昭和の建築として初めて重要文化財となった輝かしいビルです。そしてもうひとつが戦後、ダグラス・マッカーサーのGHQ総司令部が置かれたことで有名な旧第一生命館(1938年)、現在のDNタワー21です。旧第一生命館の設計者は渡辺仁。上野の東京国立博物館(1938年)や銀座・服部時計店(和光)1932年、品川・原美術館(旧原邸)1938年等の設計で知られる名建築家です。



このDNタワー21の成り立ちは複雑で、第一生命館を1995年に現地改築するにあたり、お堀に面した旧第一生命館とその真裏に建っていた旧農林中金ビルのファサードを残して両者を一体化し、そのまん中に大幅にセットバックさせた高層階を立ち上げています。高層部も旧第一生命館とデザインを合わせてあり、望み得る最大限の景観配慮を伺わせる仕上がりとなりました。

前置きが長くなりましたが、この写真は旧第一生命の裏、丸の内仲通りに面した旧農林中金の古典様式によるファサードのライトアップ写真です。実は旧農林中金も同じ渡辺仁によって1933年に竣工した同じ高さのビルで、旧第一生命のファサードが直線的で無表情なのに対してこちらはイオニア式の大きな列柱が並び、いかにも戦前洋風建築らしい美しさを堪能できます。表と裏の両面で、同じ設計者の違った作風や1930年代の建築界の流れが実感できる珍しい一例かもしれません。(2002年6月記)




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